WebデザイナーとWebディレクターの違いは?年収・スキル・仕事内容の違いを解説

Web関連の職種を探していると、「Web〇〇」という名称をよく見かけるかと思われます。
その中で、「Webデザイナー」と「Webディレクター」では具体的にどのような違いがあるのか気になったという方もいるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、WebデザイナーとWebディレクターを様々な角度から比較し、仕事内容や必要なスキル、年収、キャリアパスなどの違いについて詳しく解説していきます。
WebデザイナーとWebディレクターの違い
WebデザイナーとWebディレクターを比較した場合、以下のような面でいろいろな違いがあります。
- 仕事内容
- 必要となるスキル
- 平均年収
- キャリアパス
- 取得しておくと有利になる資格
それぞれ、詳しく解説していきます。
仕事内容の違い
そもそもWebデザイナーとWebディレクターでは、仕事内容がまったく異なります。
プロジェクトにおいて、Webデザイナーは下流工程、Webディレクターは上流工程を担当します。
それぞれの仕事内容については、以下の項目で解説していきます。
Webデザイナーの仕事内容
Webデザイナーは、クライアントの要望に沿うWebデザインを制作するのが主な仕事です。
クライアントが望むデザインを作るためには、ヒアリングを通して「具体的にどんなデザインを求めているのか」について正確に把握しなければなりません。
ヒアリングの段階で認識の齟齬が生まれてしまうと、せっかく作成したWebデザインが作り直しになってしまうリスクもあります。
なお、クライアントへのヒアリングは、制作プロジェクトのリーダーであるWebディレクターが対応するケースも多いです。
そこで決まった内容を、現場のWebデザイナーたちに伝えます。
クライアントへのヒアリングによって「制作すべきWebデザイン」が決まったら、次はワイヤーフレームを作成します。
ワイヤーフレームとは、Webサイトの設計図のことです。
ワイヤーフレーム完成後は、デザインツールを使ってデザインカンプを作成し、それをフロントエンドエンジニアに渡せば、そこで業務完了となります。
ただし、現場によってはWebデザイナーがコーディング作業まで担当することもありますので注意が必要です。
Webディレクターの仕事内容
Webディレクターは、Webサイト制作の進行管理やメンバーの調達、クライアントとの交渉などを行うのが主な仕事です。
Webサイトを制作する際は、以下のようなメンバーが必要になります。
- Webデザイナー
- UI/UXデザイナー
- Webライター
- フロントエンドエンジニア
これらのメンバーを束ねつつ、スケジュール通りにプロジェクトを進め、クライアントが求める品質の成果物を納品しなければなりません。
Webディレクターは特に責任ある立場なので、プレッシャーも大きいです。
「クライアントから理不尽な要求があってもうまくかわす」
「チームのメンバー同士が円滑にコミュニケーションが取れる体制を作る」
「各メンバーの進捗状況を把握し、進捗の遅れがあれば対応策を講じる」
何かを作るような実作業こそ少ないものの、各所での交渉や調整、メンバーたちのマネジメント、予算管理、スケジュール管理など、上流工程に関する高いスキルが求められます。
なお、「いよいよ納期に間に合わない」といった状況に追い込まれた場合には、自ら現場に入って作業をするというケースもあり得ます。
必要なスキルの違い
仕事内容がまったく異なることから、Webデザイナー・Webディレクターそれぞれに求められるスキルも変わってきます。
Webデザイナーに必要なスキル
Webデザイナーに必要となる主なスキルは以下の通りです。
- Webデザインに関する知識
- デザインツールの使い方
言うまでもなく、Webデザインに関する知識は必須です。
レイアウトや配色などについて、Webデザインを作成する際の基本的なルールについてはしっかり把握しておかなければなりません。
Webデザインは、センスで作るものではなく、ルールやロジックに沿って作成するものなので、デザインに関する体系的な知識を身に付ける必要があります。
詳しくは、以下の記事を参考にしてください。
また、デザインツールを使えるようになっておくことも重要です。
ワイヤーフレームやデザインカンプを制作する際は、ほとんどの現場においてデザインツールが使われています。
したがって、Adobeの「Photoshop」「Illustrator」などのツールを使えるようになっておかなければなりません。
無料で使えるツールについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
Webディレクターに必要なスキル
Webディレクターに必要となる主なスキルは以下の通りです。
- コミュニケーションスキル
- マネジメントスキル
Webディレクターに最も必要となるスキルは、「コミュニケーションスキル」です。
クライアントからのヒアリングや、上司との交渉や相談、メンバーたちとの円滑なやりとりなどができなければ、Webディレクターは務まりません。
さらに、各自が担当する仕事内容についてわかりやすく説明することも重要ですし、仕事へのモチベーションが上がるような声掛けも必要です。
また、マネジメントスキルも欠かせないでしょう。
スケジュールや予算などを適切に管理しつつ、成果物の品質チェックやメンバーたちの進捗管理も行う必要があります。
年収の違い
平均年収については、調査媒体によって差が出てきます。
したがってこの項目では、複数の媒体で紹介されている、WebデザイナーとWebディレクターの平均年収を紹介していきます。
Webデザイナーの平均年収
媒体名 | Webデザイナーの平均年収 |
doda | 354万円 |
マイナビクリエイター | 390万円 |
求人ボックス | 449万円 |
上記3媒体の調査によると、Webデザイナーの平均年収は354万円~449万円となっています。
媒体によってばらつきがありますが、いずれにしても、国税庁による「令和5年分 民間給与実態統計調査」で発表されている日本の平均年収460万円を下回っています。
このことから、Webデザイナーの平均年収は「やや低めの傾向にある」と言わざるを得ないでしょう。
しかし、Webデザイナーという職種はスキル次第で収入が大きく変動します。
そのため、コーディングスキルがあったり、JavaScriptによるプログラミングができたり、UI/UXデザインも可能であったりすれば、平均を大幅に超える年収を得ることも十分可能です。
Webディレクターの平均年収
媒体名 | Webデザイナーの平均年収 |
doda | 431万円 |
マイナビクリエイター | 443万円 |
求人ボックス | 499万円 |
年収の違いをわかりやすくするため、同じ3媒体で調査したところ、Webディレクターの平均年収は上記のようになりました。
いずれも、Webデザイナーより50~80万円ほど年収が上がっています。
「必要スキル」の項目で解説した通り、Webディレクターの方が全体的に高度なスキルを要求されるため、このような結果になっているのでしょう。
上記はあくまで「平均」であることから、Web制作プロジェクトの規模によっては、大幅な年収アップも現実的です。
キャリアパスの違い
WebデザイナーとWebディレクターでは、キャリアパスの面でも違いがあります。
どのような違いがあるのか、以下の項目で詳しく解説していきます。
Webデザイナーの主なキャリアパス
Webデザイナーのキャリアパスとしては、クリエイターとしてデザインの道を極めていくというキャリアを選択する人も多いですが、以下のような道へ進むことも可能です。
- アートディレクター
- フロントエンドエンジニア
- UI/UXデザイナー
- Webディレクター
アートディレクターは、Web以外でも様々なデザインに関わる職種なので、Webデザイナーのキャリアパスとして自然なものでしょう。
フロントエンドエンジニアやUI/UXデザイナーも、職域としては非常に似ているため、比較的移行することが容易です。
注目なのが、WebデザイナーからWebディレクターへのキャリアパスも十分に現実的、という点です。
同じ「Web制作」という領域に関わることから、Webディレクターの動きや立ち振る舞いを見る機会も多いWebデザイナーは、「Webディレクターには何が必要なのか」について学びやすい立場にいます。
マネジメントスキルを身に付けることで、上流工程に携わるWebディレクターへの転身を図ることも可能ですので、クリエイターよりもマネジメント側に進みたい人は検討してみるとよいでしょう。
Webディレクターの主なキャリアパス
すでにマネジメントスキルを身に付けているWebディレクターの場合、より上位の管理職を目指したり、高い知見を活かした専門職へ移行したり、といったキャリアパスがあります。
例えば、以下のような職種です。
- Webプロデューサー
- Webマーケター
- Webコンサルタント
- Webアナリスト
Webプロデューサーは、Webディレクターの上位互換とも言える職種です。
Web制作における最上流工程を担当し、制作方針の決定や、Webディレクターへの指示出し・管理などを行います。
成果物に対する最終責任者であり、どんな成果物が納品されるかについてはWebプロデューサーにかかっていると言っても過言ではありません。
その他、Webに関する知識を活かして、WebマーケターやWebコンサルタントといった専門職へ移行するといったキャリアパスもあります。
これまで培ってきた経験を活かし、クライアントが抱えるWebに関する悩みを解決していく仕事です。
取得しておくと有利になる資格の違い
WebデザイナーもWebディレクターも、働く上で特に資格は必要ありません。
しかし、未経験者や経験が浅い人の場合は、資格を持っておくことで一定の信頼感を得られる場合もあります。
取得しておいて邪魔になるものではないので、「基礎について体系的に学んでおきたい」「少しでも就職に有利な材料が欲しい」という際には取得を検討してもよいでしょう。
Webデザイナーが取得しておくと有利になる資格
Webデザイナーとして働く場合、以下のような資格を取っておくといろいろな場面で有利になる可能性があります。
- ウェブデザイン技能検定
- Photoshop(R)クリエイター能力試験
- Illustrator(R)クリエイター能力認定試験
- Webクリエイター能力認定試験
- アドビ認定プロフェッショナル
- Webデザイナー検定
上記資格の詳細やおすすめな理由については、以下の記事で紹介しているので、興味のある方は是非ご覧ください。
Webディレクターが取得しておくと有利になる資格
Webディレクターに求められるのは、「知識」よりも「経験」や「実績」であるため、資格の重要度はWebデザイナーより低いと考えられます。
しかし、以下のような資格を取得しておくことで、多少経験が浅くともWebディレクターとしての信頼度を高められるかもしれません。
- Web検定 Webディレクション
- Web検定 Webリテラシー
- ネットマーケティング検定
- Webアナリスト検定
- Web検定 Webデザイン
- Webライティング能力検定
下流工程に関する知識がなければ上流工程は務まらないため、ディレクションだけでなく、Webデザインやライティングについても把握しておく必要があります。
そのため、上記のような資格が役立つ場面も出てくるでしょう。
ただ、繰り返しになりますが、Webディレクターの場合は経験・実績が重要視されるため、資格を過信しすぎないようにすべきです。
Webデザイナーに向いている人の特徴
Webデザイナーに向いている人の特徴としては、主に以下の4つです。
- デザインに興味がある
- トレンドに敏感
- ものづくりが好き
- 地道な作業に抵抗がない
デザインに興味がある
Webデザイナーの仕事は、その名の通り「Webデザインを作成すること」です。
したがって、「デザインに興味がある」ということは大前提だと言えるでしょう。
例えば、絵を描いたり、何かをデザインしたり、といった創作活動が好きでなければ、仕事を続けていくことは難しいかもしれません。
トレンドに敏感
デザインのトレンドは、ものすごい速さで移り変わっていきます。
そのため、常に流行に対してアンテナを張っておかなければなりません。
「仕事だからやむを得ず流行を追うようにしている」という人では、そのうち仕事がつらくなってしまうでしょう。
そうではなく、もともとトレンドに敏感で、気づくと「今流行っているものは何か」「どういったデザインが支持されているのか」といったことを調べているような人は、Webデザイナーに向いていると言えます。
ものづくりが好き
ものづくりとは、何も「物理的に形に残るものを作る」ことだけではありません。
Webデザインの制作も、立派なものづくりの一つです。
自分の仕事が「Webサイト」という形で残り、いろいろな人に見てもらったり、誰かの役に立ったり、といったことに喜びを感じられる人も、Webデザイナーに向いています。
地道な作業に抵抗がない
デザインの仕事というと、華やかなイメージを持っている人も多いかもしれません。
しかしWebデザイナーの仕事には、地味な作業をひたすら繰り返している時間も多いのです。
例えば、1px単位での微妙なレイアウトのズレを直したり、色合い調整のために様々な色を適用しては変更するという作業を繰り返したり、といったような仕事です。
こうした地味な作業にも抵抗がない人は、Webデザイナーを続けやすいでしょう。
Webディレクターに向いている人の特徴
Webディレクターに向いている人の主な特徴は、以下の4つです。
- 自己解決能力が高い
- 人とコミュニケーションを取るのが得意
- マルチタスクに対応できる
- 責任感が強い
自己解決能力が高い
Webディレクターは、Webデザイナーやライター、場合によってはプログラマーなども管理しながらWeb制作を進めていくという役割があるため、何か問題が起こったりわからないことがあったりしても、自己解決できる能力が必要です。
チームのメンバーに質問することは悪いことではありませんが、判断に迷った際、頻繁にメンバーたちへ質問しているようでは相手の仕事を邪魔してしまいますし、「頼りない」と思われてしまうリスクもあります。
したがって、Webディレクターには、問題点や疑問点に対して自分で調査し、判断するという自己解決能力が欠かせません。
人とコミュニケーションを取るのが得意
Web制作に関わるメンバーたちを束ねるWebディレクターは、いろいろな人たちと接する機会が多いです。
- クライアント
- Webプロデューサーなどの上司
- 制作チームのメンバー
こういった人たちと問題なくコミュニケーションを取り、仕事を進めていかなければなりません。
「人と接するのが苦手」という人の場合、Webディレクターを目指すのは難しいでしょう。
逆に、多種多様な人とコミュニケーションを取るのが好きな人は、Webディレクターに向いています。
マルチタスクに対応できる
Webディレクターは、様々な仕事を同時並行的に進めていく必要があります。
- クライアントからの無茶な追加要求を波風立てずに退ける
- メンバーたちの進捗状況を確認する
- 上司から「必要な予算追加」の許可を得る
- クライアントが求める品質の成果物になっているかチェックする
上記は、Webディレクターの仕事のほんの一部です。
これら以外にも、Web制作に関する多くのタスクを並行して進めていかなければなりません。
したがって、マルチタスクをこなすことに抵抗がない人はWebディレクター向きと言えるでしょう。
責任感が強い
どんな仕事であろうと責任感を持つことは必要ですが、Webディレクターは「Web制作をリードする立場」である以上、人並み以上の責任感が求められます。
Webプロデューサーなどの上司がいたとしても、現場責任者はあくまでWebディレクターです。
予定通りプロジェクトが進んでいなければその責任を負う必要があるため、「なんとしても予定通りに仕事を進める」という強い責任感を持てるような人でなければ、Webディレクターは務まらないでしょう。
未経験でもWebデザイナーやWebディレクターになれる?
Webデザイナーは、未経験からでも目指しやすい職種です。
比較的学習コストが低いことから、数か月程度の勉強を経ることで、未経験OKの会社に就職したり、未経験でも応募できる案件を消化して実績を作ったりすることが可能です。
一定の実務経験を得たら、フリーランスとして活動することも可能になるでしょう。
しかしWebディレクターの場合は、未経験からいきなり目指すのはやや厳しいと言わざるを得ません。
Webディレクターは、スケジュールやメンバーを適切にマネジメントする能力が求められます。
こうしたスキルは、ただ勉強すれば身に付くというものではないのです。
したがって、まずは下流工程であるWebデザインやプログラミングといった作業に従事しつつ、徐々にマネジメントを学び、Webディレクターへの昇格を目指すというのが一般的な形となります。
まとめ
以上、WebデザイナーとWebディレクターの違いについて、様々な面から比較・解説してきました。
両者は仕事内容や必要スキルが異なるため、どちらを選ぶかは、自分の性格や将来やりたいことなどを踏まえて決めるのがおすすめです。
ただし、いきなりWebディレクターになることは難しいです。
Webディレクターを目指すのならば、まずはWebデザイナーやライター、フロントエンドエンジニアなどの下流工程での経験を積んでからにした方がよいでしょう。