Webデザイナーとフロントエンドエンジニアの違いは?仕事内容・年収・必要スキル

Webサイトの制作に興味を持った方の中には、「Webデザイナーとフロントエンドエンジニアでは具体的に何が違うのか?」と気になった方も多いのではないでしょうか。
実際、両者は同じフロントエンドに関わる職種であるため、仕事内容が重複している部分もあります。
そういった事情から、「違いがわからない」と混乱してしまうこともあるでしょう。
そこでこの記事では、Webデザイナーとフロントエンドエンジニアの仕事内容や必要なスキル、平均年収、学習コストなどの違いについて、詳しく解説していきます。
目次
Webデザイナーとフロントエンドエンジニアの「仕事内容」の違い
Webデザイナーとフロントエンドエンジニアは、同じ「フロントエンド」の開発に関わっているという点では同じですが、仕事内容においては違いがあります。
Webデザイナーの仕事内容
Webデザイナーの仕事内容は、「クライアントの意向に沿ったWebデザインの制作」がメインです。
クライアントが望むWebデザインを作り上げるためには、まずヒアリングから入ります。
「Webサイトのコンセプトは何か」
「具体的にどのようなデザインを希望しているのか」
「完成イメージに近いサイトはあるか」
「どういった部分にこだわりたいのか」
上記のようなことについて、できるだけ詳しくヒアリングを行います。
それから、ヒアリング内容をもとに、以下のような作業を進めます。
- レイアウトや配色を決める
- ワイヤーフレームを作成する
- ロゴやボタンを作成する
- デザインカンプを作成する
デザインカンプに問題がなければ、この先の仕事はフロントエンドエンジニアの領域となります。
ただし、案件によっては職域が曖昧であり、Webデザイナーが実装まで担当するケースもあるため、柔軟に対応しなければなりません。
フロントエンドエンジニアの仕事内容
フロントエンドエンジニアの仕事内容は、「Webデザイナーから提出されたデザインカンプをもとに実装する」という作業がメインです。
HTML/CSSを使って、デザインカンプ通りにコーディングし、Webサイトを作り上げていきます。
また、JavaScriptを使ってサイトに動きをつけたり、必要な機能を搭載したりするのも重要な仕事です。
例えば、以下のような機能です。
- ユーザーの入力内容が正しいかどうかのエラーチェックを行う
- アニメーションを流す
- ポップアップウィンドウを表示する
- ブックマークレットを作成する …など
また、サーバー側のプログラミングを担当するバックエンドエンジニアとの連携も必要になります。
Webデザイナーとフロントエンドエンジニアの「年収」の違い
「フロントエンド」という同じ領域を担当するWebデザイナーとフロントエンドエンジニアですが、年収にどの程度違いがあるのか興味がある方も多いでしょう。
この項目では、それぞれの職種の年収について紹介していきます。
Webデザイナーの年収
求人ボックスによると、Webデザイナーの年収や時給は以下のようになっています。
正社員 | 平均年収:449万円 |
派遣社員 | 平均時給:1,893円 |
パート・アルバイト | 平均時給:1,187円 |
国税庁による令和5年分の民間給与実態統計調査の結果では、日本の平均年収が「460万円」となっているので、Webデザイナーの年収はやや低めと言えるでしょう。
しかし、Webデザイナーの年収はスキルや経験によって大きく変動するため、平均を大きく上回る年収を得ている人も多数存在します。
フロントエンドエンジニアの年収
求人ボックスによると、フロントエンドエンジニアの年収や時給は以下のようになっています。
正社員 | 平均年収:402万円 |
派遣社員 | 平均時給:2,146円 |
パート・アルバイト | 平均時給:1,299円 |
平均年収が402万円と、Webデザイナーよりも低い数字になっていますが、本来はもう少し高くなる傾向にあります。
実際、他の媒体での調査結果では、500~600万円あたりとなることが多いです。
そしてWebデザイナー同様、フロントエンドエンジニアも、スキル次第で大きく収入を増やすことが可能です。
Webデザイナーとフロントエンドエンジニアの「必要スキル」の違い
Webデザイナーとフロントエンドエンジニアでは、それぞれ求められるスキルが異なります。
両者に必要なスキルについて詳しく解説していきます。
Webデザイナーに必要なスキル
Webデザイナーに必要となる主なスキルは以下の通りです。
- Webデザインに関する基礎知識
- デザインツールに関するスキル
- コミュニケーション能力
Webデザインに関する基礎知識
まず、当然ながらWebデザインの知識やスキルは必要になります。
Webサイトのレイアウトや配色などについての基礎知識がなければ、Webデザインを作成することはできません。
これからWebデザインを学ぶという際には、まずWebデザインの基礎知識から習得するようにしましょう。
デザインツールに関するスキル
Webデザインを作成するためのデザインツールに関するスキルも必須です。
ほとんどの現場において、IIlustratorやPhotoshop、XD、Figmaなど、何かしらのデザインツールが使用されています。
したがって、このようなデザインツールを使った画像調整やレイアウト作成などができるようになっておく必要があります。
コミュニケーション能力
意外かもしれませんが、コミュニケーション能力もWebデザイナーにとって大事なスキルとなります。
クライアントへのヒアリング時に、潜在的な要望を引き出したり、クライアントの意図を正確に把握したりするためには、高いコミュニケーションスキルが求められるからです。
また、チームでWebデザインを行う機会も多いことから、コミュニケーションスキルを高めることで、チームメンバーと円滑に仕事ができるようになるでしょう。
フロントエンドエンジニアに必要なスキル
フロントエンドエンジニアに必要となる主なスキルは以下の通りです。
- HTML/CSSの知識やコーディングスキル
- JavaScriptによるプログラミングスキル
- コミュニケーション能力
HTML/CSSの知識やコーディングスキル
Webデザイナーが作成したデザインカンプをもとに実装作業をするため、HTML/CSSの知識は欠かせません。
HTML/CSSは、フロントエンドエンジニアにとっての基礎的なスキルと言えるでしょう。
JavaScriptによるプログラミングスキル
JavaScriptは、Webサイトを作成する際によく使用されるスクリプト言語です。
ChromeやFirefoxといった代表的なブラウザには、あらかじめJavaScriptの実行環境が備えられているため、環境を構築することなくJavaScriptを動作させることができます。
Webサイトに動きをつけるためにJavaScriptによるプログラミングが必要となることも多いので、必ず身に付けておかなければなりません。
コミュニケーション能力
Webデザイナー同様、コミュニケーション能力も重要です。
フロントエンドエンジニアは、Webデザイナーやバックエンドエンジニアと連携を取りながら仕事を進めていくため、コミュニケーションスキルが不足していると仕事に支障が出てしまう可能性があります。
Webデザイナーとフロントエンドエンジニアの「学習期間・学習コスト」の違い
Webデザイナーとフロントエンドエンジニアは、仕事の領域が近いとはいえ、それぞれ特有の仕事もあることから学習期間・コストも異なります。
この項目では、それぞれの学習期間や学習コストについて紹介していきます。
Webデザイナーになるための学習期間・学習コスト
未経験からWebデザインスキルを習得するには、主に「独学」と「スクール」の2種類があります。
仕事をしながら学習するのか、学習にコミットするのかによって、学習にかかる期間は変わってきます。
独学の場合の学習期間 | スクールの場合の学習期間 | |
仕事をしながら学習する場合 | 約1年 | 約半年 |
学習にコミットする場合 | 約半年 | 約3ヶ月 |
上記の期間は、あくまで目安となります。
実際にどれくらいの期間がかかるかについては、本人のやる気や能力、使用する教材、スクールの質などによって大きく変化するのでご注意ください。
学習コストは、独学ならばかなり安く抑えることができるでしょう。
費用が必要となるのは、「書籍代」や「月額1,000円程度のオンライン学習教材代」くらいです。
あとは、無料で活用できるYouTubeの解説動画やWebデザインについて解説しているブログなどを参考にするだけで十分学ぶことができます。
スクールに通うとなると数十万単位の費用が必要になりますが、その分独学よりもスキルの習得スピードが速くなりますし、体系的な知識が身に付くといったメリットもあります。
独学とスクール、どちらの方法を選ぶかは人それぞれの価値観次第でしょう。
フロントエンドエンジニアになるための学習期間・学習コスト
未経験からフロントエンドエンジニアを目指す場合、学習期間はWebデザイナーを目指すよりも大幅に長くなることが多いです。
なぜならば、未経験からフロントエンドエンジニアを目指す際は、約1,000時間の学習が必要と言われているからです。
1,000時間の学習時間となると、スクールに通っても半年~1年程度の学習をしなければなりませんし、独学となると更なる学習期間が必要となるでしょう。
HTML/CSSの他にも、UI/UX、JavaScript、JavaScriptのライブラリであるjQueryなど、学ぶべきことが数多くあります。
そのため、学習コストもWebデザイナーより高くなるのが一般的です。
スクールに通う場合は、30~50万円ほどの費用が目安となります。
独学ならばコストを抑えることができますが、Webデザイナーよりも覚えることが多いため、知識の抜け漏れを防ぎたかったり、効率的な学習をしたかったりする人にはスクールの利用がおすすめです。
特に急いでいない人は、独学でゆっくりとスキルを身に付けていくのもよいでしょう。
Webデザイナーとフロントエンドエンジニアの「あると有利な資格」の違い
Webデザイナーとして働く場合でも、フロントエンドエンジニアとして働く場合でも、特に資格は特に必要ありません。
重要なのはスキルや経験なので、資格なしで活躍している人たちはたくさん存在します。
しかし、実務未経験の場合は、資格を取得することで「一定の知識があること」や「目標に向かって努力できること」などをアピールできるため、取得しておいても損はないでしょう。
この項目では、それぞれの職種において「就職に有利になる資格」を紹介します。
Webデザイナーが取得しておくと有利になる資格3選
Webデザイナーとしての就職を目指す場合、以下の3つの資格があると有利になるかもしれません。
- ウェブデザイン技能検定
- Photoshop®クリエイター能力認定試験
- Illustrator®クリエイター能力認定試験
ウェブデザイン技能検定
ウェブデザイン技能検定は、Webデザイナーとしての必要な知識やスキルが問われる国家資格です。
難易度が3種類に分かれており、3級の合格率が60~70%、2級が30~40%、1級が10~20%となっています。
国家資格のため、信頼性は高いと言えるでしょう。
Photoshop®クリエイター能力認定試験
Photoshop®クリエイター能力認定試験は、世界中で使われている画像加工ツールであるPhotoshopの活用スキルが問われる試験です。
「スタンダード」と「エキスパート」の2種類があり、スタンダードでは実技と実践の問題のみとなりますが、エキスパートではさらに知識も問われます。
Webデザインの仕事現場でPhotoshopが使われていることは多いため、Photoshopに関するスキルがあることを証明できるメリットは大きいでしょう。
Illustrator®クリエイター能力認定試験
Illustrator®クリエイター能力認定試験は、Photoshop同様にWebデザイン制作によく使用されるデザインツールであるIllustratorの活用能力を測定する試験です。
こちらも「スタンダード」と「エキスパート」にレベルが分かれており、エキスパートでは実技・実践問題に加えて知識問題も出ます。
Photoshopと一緒に使われることが多いツールであるため、未経験者の場合、できればこちらの資格も取得しておくのがおすすめです。
フロントエンドエンジニアが取得しておくと有利になる資格3選
フロントエンドエンジニアとして就職したい場合は、以下のような資格があると有利になる可能性があります。
- HTML5プロフェッショナル認定試験
- 基本情報技術者試験
- PMP
HTML5プロフェッショナル認定試験
HTML5プロフェッショナル認定試験は、「HTML」「CSS」「JavaScript」といったフロントエンドで使われる言語に関する知識・スキルを認定する資格試験です。
「レベル1」「レベル2」の2種類に分かれており、レベル1ではHTML/CSS、レベル2ではJavaScriptについて、一定のスキルがあることを示すことができます。
基本情報技術者試験
基本情報技術者試験は、経済産業省が認定する国家資格で、IT技術者としての基本知識・スキルが問われます。
資格試験名に「基本」という文字が入っているものの、その難易度は比較的高く、合格率は50%前後、年によっては40%程度ということもあり、決して簡単な試験ではありません。
そのため、未経験者の場合は「エンジニアとしての一定水準の知識・スキルがある」という証明になることから、取得する価値は高いと言えるでしょう。
PMP
PMP(Project Management Professional) とは、プロジェクトマネジメントにおける経験・知識などを測るための国際資格です。
技術者としてだけではなく、マネジメントスキルのアピールにも繋がるので、将来的なキャリアパスにも大いに役立つことでしょう。
Webデザイナーやフロントエンドエンジニアに向いている人の特徴
この項目では、Webデザイナー・フロントエンドエンジニアそれぞれの「向いている人の特徴」について解説していきます。
Webデザイナー向きの人
- 地道な作業に抵抗がない
- デザインや絵を創作することが好き
こういった人は、Webデザイナーに向いていると言えるでしょう。
Webデザインの仕事は、地味な作業の繰り返しによって成り立っています。
デザインをするだけでなく、ちょっとしたレイアウトのずれを直したり色味を調整したり、といった作業をひたすらこなしていく時間も意外に多いのです。
何かをデザインしたり絵を描いたりといったクリエイティブな作業が好きであることはもちろんですが、上記のような細かな作業を根気よく続けられるかどうか、という点もWebデザイナーとしての素養を測る上で重要な要素となります。
フロントエンドエンジニア向きの人
- 技術的なことに興味がある
- 論理的思考が得意
Webデザイナーは「クリエイター」ですが、フロントエンドエンジニアはその名の通り「エンジニア(技術者)」です。
したがって、技術的なことに強い興味を持ち、常に最新技術に対してアンテナを張っているような人には向いているでしょう。
また、論理的思考が得意かどうか、という点も重要です。
プログラミングには論理的思考が必要となるため、苦手な人にとってはプログラミングをすることが苦痛に感じられるかもしれません。
ただし、論理的思考についてはプログラミングを学ぶ上で自然と身に付くことも多いので、学習前の段階で備わっていなくともあまり心配しなくてもよいでしょう。
Webデザイナーとフロントエンドエンジニアではどちらがおすすめ?
Webデザイナーとフロントエンドエンジニアのどちらがおすすめかは、何を重視するかによって変わってきます。
- やりがい重視なのか
- 就職までのスピード重視なのか
- 将来性重視なのか
例えば、できるだけ早く手に職をつけて働きたいという場合は、未経験からでも数か月ほどの学習で就職が可能なWebデザイナーがおすすめですし、将来性重視ならばフロントエンドエンジニアの方がおすすめです。
また、やりがい重視の場合は、クリエイターとエンジニアのどちらに魅力を感じるかを指標にして選ぶとよいでしょう。
このように、どこに比重を置くかを決めて自分なりの選択をしてください。
Webデザイナーとフロントエンドエンジニアに関するFAQ
この項目では、Webデザイナーとフロントエンドエンジニアに関してよくある質問を取り上げ、回答していきます。
Webデザイナーからフロントエンドエンジニアになることは可能?
Webデザイナーからフロントエンドエンジニアになることは、比較的容易だと言えるでしょう。
もともと職域が近いことから、Webデザイナーはフロントエンドのことを熟知しているケースも珍しくありません。
また、HTML/CSSを用いたコーディングまで担当しているWebデザイナーならば、あとはJavaScriptやUI/UXに関するスキルを習得すれば、フロントエンドエンジニアへ転向することが可能となります。
未経験でもWebデザイナーやフロントエンドエンジニアになれる?
Webデザイナーやフロントエンドエンジニアは、他のIT系技術職と比較すると学習コストが低いため、未経験からでも十分に目指すことが可能です。
実際、20代未経験という方はもちろん、30代以上でも未経験からWebデザイナーやフロントエンドエンジニアになっている方も少なくありません。
「Webデザイナーになりたい」「フロントエンドエンジニアになりたい」という強い気持ちがあるのならば、未経験であることを恐れず、是非積極的にチャレンジしてください。
Webデザイナー兼フロントエンドエンジニアとして活動できる?
結論、Webデザイナー兼フロントエンドエンジニアとして活動することは可能です。
再三お伝えしている通り、Webデザイナーとフロントエンドエンジニアの職域は近いものがあるため、スキルアップを図ることで両者を兼任することは十分現実的だと言えます。
Webデザイナーならば、コーディングやUI/UX、JavaScriptのスキルを身に付ければフロントエンドエンジニアの仕事もできますし、フロントエンジニアならば、Webデザインの知識やデザインツールの使い方を習得すれば、Webデザイナーの仕事もこなすことができます。
まとめ
以上、Webデザイナーとフロントエンドエンジニアについて、いろいろな角度から比較しつつ、それぞれの違いを解説してきました。
クリエイターであるWebデザイナー、エンジニアであるフロントエンドエンジニア、という違いはあるものの、Webにおけるフロントエンドを担当するという部分では共通しています。
したがって、どちらの職種を選ぶかは、「自分が何をやりたいのか」「どういった部分を重視するのか」を意識して選ぶのがよいでしょう。